熟練の西海岸黒人ドラマー、ローレンス・マラブルの唯一のリーダー作で
ありながら、実質上は彼が発掘したテナーサックスの新人
ジェームス・クレイの初リーダー作というジャズ界の美談的作品だ。
一般に、テディ・エドワーズが西海岸のソニー・ロリンズと渾名されて
有名だが、実はジェームス・クレイこそが
“本当の西海岸のソニー・ロリンズ”
と呼ぶに相応しいという事が、本アルバムを聴けば誰しも納得できるだろう。
フレージングは勿論、キュッとリードミスを起こすタイミングまでもがソニー・ロリンズに
そっくりなのだから(本物はこれほどミストーンは多くないが)。
強いて違いを言えば、本アルバムが録音された56年当時
ソニー・ロリンズはメタルマウスピースでサブトーン
ジェームス・クレイはラバー製でフルトーン
という音色差くらいだろう。
ローレンス・マラブルのドラムがタイトで素晴らしいのは言うまでもなく
ソニー・クラークも後にニューヨークで録音する「マイナー・ミーティング」など
3曲のオリジナルを提供しつつ快調なプレイを聴かせる。
大概名盤と言えども、スローテンポな曲では間延びして退屈になるものだが
本アルバムは寛ぎながらも決して間延びせず全編期待に弾みながら
聴き通す事ができる稀有な作品だ。
本アルバムのハーブ・ゲラー作「エアータイト」は
ゲラーの『ファイアー・イン・ザ・ウェスト』に収録の
「アン・エア・フォー・ザ・ヘア」と異名同曲。
テナーマン/ローレンス・マラブル
テナーマン ジャズアルバム紹介 に加筆・修正を加え転載。
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